【マネジメントQ&A】Q1 病院内多職種間の情報の共有化、コミュニケーション、連携不足の改善方法は?


Q1
【質問カテゴリ:連携・協業】

病院内多職種間における情報の共有化、コミュニケーション、連携不足がある。この現状を改善するには、どう取り組めばよいのでしょうか?



回 答

この質問の中味は、カルテの一元化や電子カルテ化での「文字による情報の共有化やコミュニケーションや連携」ではなく、個々のケースのケアに対する担当者間の「“実のある”“ケア・日常業務に直結した” 情報の共有化やコミュニケーションや連携」の不足、という意味と拝察します。

まず質問です。

○「土俵」は1つになっていますか。

つまり、質問者さんの病院では、医師は救命・疾病治療という土俵、看護師は健康管理や処置やリスク管理という土俵、PTは運動・動作機能の回復という土俵、介護職は「できないことをしてあげる」という土俵・・・というように、それぞれの職種がそれぞれの土俵の上に立って、物事を見、情報を発信・受信し、ケアしているのではないでしょうか。

その土俵は、“古き専門性”で作り上げられた土俵ですね。また、古き専門性の土俵でしか相撲を取れない方々が多くいるのも事実ですね。

しかし、それぞれの土俵でそれぞれに相撲をとっていては、ケース本人にとって意味のある・有効なケアの提供とはならないでしょう。

では、どうしたらいいでしょう。

ポイント①“古き専門性”を否定してはいけません。

これには、何の益もありません。かえって反発を食らうだけです。現在、”古き専門性”の上で仕事をしているのであれば、ひき続き“古き専門性”の土俵で頑張ってもらうことが必要です。

ポイント②“古き専門性”の土俵の上に、“ケース本人が望む生活の土俵”を作ることです。

この土俵は“関係職種に共通する土俵”であり、チームワークのために不可欠な土俵です。

つまり、担当者会議も日常業務における相談・確認作業も、生活・生活行為に基づいた視点を話し合いの中心にすることです。各専門職から健康状態や要素的機能や動作能力の話がでてきたら、それはケースが望む具体的生活行為達成のための大切な・無くてはならない機能であり、その機能向上にために頑張っていただきたいことや、その機能を実際の行為や生活に結び付けるように具体的にお願い・確認していくことです。

“生活・生活行為”という上位の土俵ができれば、“古き専門性”の土俵は下位の土俵となり、ケースが望む生活・生活行為達成のための手段となるのです。

ポイント③作業療法士に黒子的リーダー役(間接的作業療法)を担って欲しいです。

ケースマネジメントを進める上でリーダーは不可欠です。

表のリーダーは、医療では医師、介護では介護支援専門員、福祉では相談支援専門員でしょうか。

チームには黒子役(調整役、つなぎ役のことが多い)としての影のリーダーが不可欠です。

生きたチームになるには、誰かがそれぞれの担当者と報告・連絡・相談(1対1の対応、接着役)を担い、上手く調整しないとケースに益のあるケアにはならないのです。

この接着剤役に、ぜひ作業療法士が成って欲しいのです。




その理由は、

・作業療法士は狭義の専門性は薄いが幼熟性(ネオテニー※)を保有しているため“柔軟性が高い”、“関係性が広い”、“腰が低い(誰にでも頭を下げられる)”からです。

・作業(人の暮らし、生活、生活行為・・)・作業遂行に関する専門家であり、作業は個々の機能や能力、環境との集合によって実行されるものであるから。

・本人の思いを聞き、その実現に向けて助言し、一緒に取り組む専門家であるから。

です。


※ネオテニー

生物や組織が進化するということは「特殊化」「専門化」が進むことともいえます。

確かに組織の進化が進むと、対象領域に対する適応力が優れ、他の追随を許さない力と社会的地位が得られます。

反面対象外の領域の急激な変化や大きな環境の変化には、対応・適応し難くなります。

一方,幼形熟成(ネオテニー)においては、あまり「特殊化」「専門化」が進まない状態が多くみられます。

組織においては,そのようなスタッフは常日頃,専門性の不足があるため、高く評価されません。でも誰とでも関係性を持つことができ、どんな意見も受け入れ、大きな変化にも柔軟に対応できる力があります。

作業療法士って、他の職種より幼形熟成的だと思いませんか・・・・。それが強みなのだと思います。

(MO)

Organization Management Network for OT

OT組織マネジメント・ネットワークは、 組織を活かし、社会に貢献する作業療法士の集いです